昔から高品質に撮影した素材をフォトストックのようなサービスとして活用できないかという構想がありました。こうしたアイデア自体は珍しくありませんが、最近になってHDRI(.hdr形式)の素材に関する問い合わせが立て続けに寄せられたことをきっかけに、日本国内向けのHDRIストックフォトサービスを試験的に公開しました。基本的にはUE5などと同様に個人やフリーランスの方々が無料で利用できるよう配慮しています。
OpenReel-HDRIフリーサイト
https://openreel.org/
日本国内のHDRI素材はまだあまり充実していないのが現状です。HDRIとは、hdr形式の大容量画像ファイルを指し、リアルな環境光を再現するために使用される技術です。ライティングの手間を軽減しながら、より自然に近い照明効果を得られるため、映像制作やゲーム開発、建築ビジュアライゼーションなど多岐にわたる分野で活用が進んでいます。もう少し詳しく説明します。
HDRIは通常の画像形式よりも広いダイナミックレンジを実現しています。.hdr形式では具体的に各チャンネル(RGB)に対して32ビット浮動小数点数を採用しており、これにより理論上は太陽の直射光から深い影の細部まで、人間の視覚系以上の輝度差を情報を格納できます。
通常の画像では、sRGB色空間内の0~255の整数値(8ビット)で表現されるため、明るすぎる部分は255にクリップされ、暗すぎる部分は0にクランプされてしまいます。このクリッピングにより、実世界の光の情報が大幅に失われてしまうのに対し、HDRIでは実世界の光の挙動をより忠実に記録できるのです。そのような拡張された画像形式ですが、exr形式に比べれは軽量です。
HDRIは、IBL(Image-Based Lighting)と呼ばれる技術により、HDRIの各ピクセルは輝度に応じた光源として機能し、3Dオブジェクトに複雑な光の当たり方を提供します。特に物理ベースレンダリング(PBR: Physically-Based Rendering)のワークフローにおいては、HDRIが提供する正確な輝度分布が材質の反射特性(特に金属やガラスなどの反射率の高い素材)と組み合わさることで、非常にリアルな表現が可能になります。例えばUnreal Engine 5では、HDRIとLumenというグローバルイルミネーションシステムを組み合わせることで、光の間接反射までもリアルタイムに計算することができるようになりました。
しかしUnreal Engine 5では、5.4/5.5時点においてもHDRIの光源を正しく処理されません。HDRIの太陽光からの光源情報の扱いに関して技術的な制約があるようです。シェーダーやサンプリング数など光源に対する割り当ての影響のためか光の不正確が発生します。まともに影が落ちません。少し変えると色温度までもが変わったりする始末です。そのため主要な光源(太陽など)をDirectional Lightとして別途追加し、手動で方向と強度を合わせるなどの方法を選択することになります。UE5におけるHDRIの光源処理の問題は、リアルタイムレンダリングの技術的制約に起因する複合的な課題であり、将来的なエンジンアップデートやハードウェアの進化によって徐々に改善されていくものと考えられます。UE6ぐらいになったら改善されることでしょう。UE5に限らず様々なCGソフトウェアで内部処理の違いもあるでしょう。
そのような背景から、バンダイナムコスタジオからHDRIの精度向上を目指すTrueHDRIというプロジェクトが公開されていたり、さまざまな企業が利用する環境にあわせて論議を続けています。このプロジェクトは単なる研究にとどまらず、実際の大規模プロダクション環境における問題解決を目指す実用的な取り組みであり、バンダイナムコスタジオの技術的先進性を示すものといえます。
TrueHDRI
https://www.bandainamcostudios.com/projects/truehdri
HDRIサイトの最高峰であり世界標準といえばPoly Havenです。非営利団体でありCC0ですべてのHDRI素材を公開しています。技術水準も高く完璧な素材を実現しています。Poly Havenは一定の品質を満たすために多段階のブラケット撮影、高解像度と多様な提供フォーマット、正確な撮影機材が使用されています。
Poly Haven
https://polyhaven.com/
OpenReelでもPoly Haven品質まで求めたいところですが、コストと時間という課題があります。そのため実用的な品質を保ちながら効率化を入れておりサイズは12Kを標準としてhdrファイルのみを作成しています。サイトの方針としてHDRIをはじめとする高品質デジタル素材を提供し、自然環境や都市景観など多彩なシーンを高解像度・高ダイナミックレンジで収録。写真の美しさとリアリティを最大限に活かし、幅広い分野での活用を可能にします。誰もが簡単にアクセスできるデジタル空間データの構築することで、研究や教育、クリエイティブ制作など幅広い分野を支援します。
というコンセプトで要望があつまれば360°映像やレザースキャンを用いたコンテンツも掲載しようかなと思っていますが以上になります。
OpenReel-HDRIフリーサイト
https://openreel.org/
Poly Havenなどにもない素材として、ドローン空撮のHDRI素材など珍しいものも掲載しています。よろしくどうぞ。
ドローン空撮
https://openreel.org/2025/01/27/vast-ocean-under-the-sun-with-mount-fuji-and-boats-in-the-distance/
https://openreel.org/2025/01/23/clear-sky-with-mountains-sun-above-snowy-forests-and-fields-below/
より高品質なHDRI撮影は個別に受けてゆく方向性になりますが、個人やフリーで日本の風景で合成して楽しむというのが趣旨です。UE5でHDRI設定をして楽しんでみてください。ほら、楽しそうでしょう。
OpenReel-HDRIフリーサイト
https://openreel.org/